研究概要 |
福岡地方固有の豆腐味噌漬けは独特のチーズ様の風味とテクスチャーを持つ食品であるが、この特性は熟成中の豆腐タンパク質の分解によるものである[舟木淳子他:日食工誌,43,546・551(1996)]。タンパク質の分解は味噌麹中に存在するAspergillus oryzaeの中性プロテアーゼ(ANP・II)によるものであることを筆者らはこれまでに明らかにした[J.Funaki et al., J. Food Biochem., 21, 191-202 (1997)]。またANP-IIは豆腐や豆乳タンパク質を効率的に分解し、大豆の主要アレルゲンGly m Bd 30K [T. Ogawa et al., Biosci, Biotech, Biochem., 59, 831-833 (1995)]も分解することをSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により筆者らは予備的に確認している。そこで本年度はSDS-PAGEだけではなく、Gly m Bd 30K特異的抗原を用いたウェスタン分析によるアレゲン分解度の観察を行い、Gly m Bd 30Kを分解する最適条件について検討し、低アレルゲン化した豆乳を用いたゲル状食品調整についても試みた。 通常豆腐作製用に調整する方法で大豆より作製した豆乳(タンパク量36mg/ml)を用い、麹から抽出・精製したANP-II(7.3×10^<-3>unit/ml)を加えGly m Bd 30Kを分解させたところ、豆乳19にANP-II1を加え、50°Cで15時間反応させた時が、最もGly m Bd 30Kが分解されることが、SDS-PAGE及びウェスタン分析により観察された。この低アレルゲン化された豆乳を用いたゲル状食品の作製を試みた。上記の条件で低アレルゲン化した豆乳は柔らかいゲル状になっており、オートクレーブ処理することで、より強固な豆腐状のゲルとなることが判明した。また、凝固剤グルコノデルタラクトンを用いた豆腐作製方法や寒天を加えてゲル状に固める方法も適していることがわかった。
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