澱粉の物性制御に及ぼす脂肪酸の影響を検討するために、澱粉粒に脂肪酸を導入し、脂肪酸導入量の定量、糊化特性および粘性特性について検討し、以下の結果を得た。 1.各種澱粉に導入する内部脂肪酸量のコントロール方法の検討 既報で、脂肪酸の種類によって導入量が異なった為、任意の脂肪酸量を有した澱粉粒を調製する目的で、加熱導入法、浸積法および濃縮乾固など数種の調製法を検討した。30〜50℃の各温度で導入時間を変化させ、ガスクロマトグラフ(今回申請備品)で脂肪酸量を測定したところ、温度が高く時間の長い方が多く導入されたが、澱粉粒の破損が顕著であった。一方、浸積後、濃縮乾固させた場合は脂肪酸含有量が著しく増加し、濃度勾配により任意の脂肪酸含有量の澱粉粒が調製できることが示唆された。また、脂肪酸の導入と澱粉粒中のアミロースとの関係を検討するために、モデル実験を行ったところ(Biosci.Biotech.Biochem.に本年度掲載)、アミロースの分子量が大きい方が導入量も多いが、脂肪酸ごとに導入量が著しく異なるため、澱粉粒に導入する脂肪酸量をコントロールするためには、アミロースのみではなくアミロペクチンにも抱合させる必要があると考えられた。今後も継続して方法を検討する。 2.調製した加工澱粉粒の糊化特性および粘性特性の検討 脂肪酸が澱粉粒の膨潤および粘性特性に及ぼす影響は、ラピッド・ビスコアナライザー(現有設備)を用いて測定したところ、粘度立ち上がり温度が上昇し、膨潤が抑制されたことが示された。また、最高粘度および膨潤後の澱粉粒の崩壊を示すブレークダウンが脂肪酸の導入により減少し、膨潤し糊液になる過程の粘度変化が小さいことが認められた。脂肪酸の導入は、糊化温度よりも糊液の粘性特性に大きく影響すると考えられた。
|