試料は、織物とニットあわせて32種類の布地(以下試料A群と呼ぶ)、上に重ねる布地として裏地や比較的薄地の織物計13種類の布地及びストッキング地とタイツ地(以下試料B群と呼ぶ)を選択した。これらの試料についてKES-FBシステムにより生地物性を把握した。その結果、せん断特性については、せん断剛性Gが0.18g/cm〜6.56g/cm、2HGが0.08〜3.38g/cm、圧縮特性については圧縮特性の直線性LCが0.15〜2.35、圧縮仕事量WCが0.12〜1.061g/cm^2、引張特性は伸び率EMTが1.37〜80.51%、引張仕事量WTが4.31〜44.93g・cm/cm^2と幅広く分布していた。これらの試料について単独の平均摩擦係数(MIU)、摩擦係数の変動(MMD)、表面粗さの変動(SMD)を測定し、さらに、A群の試料の上にB群の試料を重ねた状態でMIU、MMD、SMDを測定した。MIUとMMDの測定用の摩擦子には指紋をシュミレートしたもの、ストッキング地、タイツ地を付けたものの3種類を使用した。 重ね布のMIUは、A群とB群の試料のそれぞれ単独のMIU値の間で変化することが多いが、強いていえば上に重ねたB群の布の摩擦特性の影響の方が大きく表れていた。ここで、B群の布の圧縮特性に着目すると、圧縮仕事量の大きい布地を重ねた場合、重ね布全体としてのMIUが高くなる傾向がみられ、重ね布全体のMIUと上に重ねた布地の圧縮仕事量との間には相関があることがわかった。また、摩擦子に特にB群の中からストッキング地、タイツ地を選択して用いると、MIUは高くなる傾向がみられた。SMDの場合もMIUと同様、表地の上に裏地を重ねることにより、それぞれ単独のSMDと比較すると様々に変化するが、B群の布のSMDの影響だけでなく、圧縮特性の直線性との間に密接な関係があることがわかった。
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