本年度は、以下の二点について主に研究を行なった。 (1)ワンピースドレスの動的シルエットの美しさに関わる布の力学特性:KES‐Fシステムによる高感度標準条件で測定される布の引張り、せん断、曲げ特性および布重量をもとに、テーラード、はり、ドレープの3つの主な婦人服のシルエットタイプの中から、最適なシルエットを判別する式を用いて、ルーズフィットなシルエット向き(ドレープとはりタイプ)と判断される布23種を用いて、実験用ワンピースドレスを作製した。これを用いて、女子大学生を評価者として、モデルによる歩行、あるいは、人の歩行を模擬する等身大のマネキンに着用させ、布の揺動の美しさ、座屈の美しさなどについてSD法により官能評価を行なった。また、評価の感度を高めるため、ドレープタイプの布10種を用いた一対比較法による官能評価も行なった。一方、布の力学特性値として、引張り、曲げ、せん断特性のKES-Fシステムによる高感度標準条件のほか、着用時に合わせた微小変形条件での測定も行ない、官能評価値との関係を調べ、美しいと評価された布の力学特性値の範囲と特徴を明らかにした。特にせん断特性については、布の自重程度の軽い張力を負荷し、最大せん断角を2°として測定した値のほうが、KES‐Fの標準測定よりも、動的なシルエットの美しさを説明できることがわかった。また、せん断振動特性についても新しい試作機により測定し、この特性値も布の動的な美しさを評価する有効なパラメータであることを明らかにした。さらに、布の微振動や舞い上がりなどによりドレスを生き生きと感じさせる布の特性値を明確にするため、測定法の改良など検討している。 (2)衣服のデザインと布物性の実態調査:高品質と評価されているファッション雑誌に掲載される衣服のアイテムやデザイン(パンツやスカートならタイトやキャザ-やフレア-など、ブラウスならタイカラーやフリルカラーなど)を分類し、KES-Fによる布地の基本力学特性や風合いの範囲と特徴を明らかにし、テキスタイルやアパレルの設計部門のほかアパレルデザイン教育にも使える基礎的な資料を得ることができた。
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