本研究の目的は、(1)チューブリンに脂質過酸化物を作用させた時の、チューブリンの劣化機構を、機能と構造の両面から解明し、(2)脂溶性および水溶性還元剤の添加が、劣化したチューブリンの機能を回復させるかどうかを検討することである。本年度は、(1)のチューブリンのリン脂質過酸化物による劣化機構を中心に検討を加えた。 過酸化物生成の確認は、吸光度233nmでの吸収増大によった。脂質過酸化物の純度検定は、HPLCによる210nmでの紫外吸収検出に加え、電気化学検出により行った。紫外吸収と電気化学検出の結果を組み合わせることによって、チューブリンとリン脂質過酸化物の相互作用実験に、毎回一定量の脂質過酸化物の添加が可能となった。 チューブリンは、重合して微小管を形成するときGTPase活性を発現する。そこで、リン脂質過酸化物をチューブリンに作用させた時のGTPase活性を測定した。チューブリンのGTPase活性は、過酸化物の濃度に依存して低下させられた。チューブリンの劣化機構を検討するために、蛍光および紫外吸収スペクトルの測定を行った。蛍光分析の結果、励起スペクトルのブルーシフトが観察され、疎水性残基の表面への出現が確認された。このことにより、チューブリンとリン脂質過酸化物が相互作用し、チューブリンの立体構造に影響を与えていることが明らかになった。また、チューブリンにリン脂質過酸化物を加えた時の紫外吸収スペクトルの変化を、差スペクトル法でも検討した。その結果、低波長(紫外部)側の吸収に変化がみられた。このことは、チューブリンのヒスチジン残基が影響を受けたためと考えられる。今後はアミノ酸残基への影響や立体構造変化について、より詳細に検討を行う予定である。
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