冷え症とは身体の特定部位だけが特に冷たく感じる場合をいい、主に腰、手足の先端部に冷えが起こることが多い。この症状は、健康な女子学生528名(年齢19.8±l.1歳)を対象に、前年度に行った冷え症のアンケートによる実態調査を行った結果、「冷え症である」と答えた者は301名で全体の約57%を占めていた。そこで冷え症という症状が成人後に有訴率が高くなるということから、動物(ラット)を用いて女性ホルモン、特に高濃度の女性ホルモンレベルが局所の皮膚温および皮膚血流量にどのような影響を及ぼすかを調べ、男性ホルモンの作用と比較したので報告する。 実験動物として5〜10週齢の雌性Wisterラットを使用し、女性ホルモンのβエストラジオール投与群(以下E群)と男性ホルモンのテストステロン投与群(以下T群)の2群に分けた。実験は麻酔下で行い、ラットを仰臥させて固定し、胸部と腹部は剃毛し、体温測定器(DIGITAL THERMOMEIER HL-3600)と血流計(ADVANCE LASER FLOWMETER ALF21)のプローブをそれぞれの部位に貼付した。皮膚温の測定部位は、体幹部(胸部、腹部)、末梢部(右手、右足、左足、尾部)とし、血流量の測定部位は腹部のみとした。各性ホルモンはそれぞれ10^<-1>g、2λ10^<-4>g、5λ10^<-4>g、10^<-3>g、2λ10^<-3>gの順に量を増加しながら投与し、5分毎に90分間測定した。 体幹部皮膚温:E群では10^<-4>〜10^<-3>gまでは皮膚温は変化しなかったが、合同用いた最大量2λ10^<-3>gでやや減少する傾向があった。 一方、T群では最小量の10^<-4>gで皮膚温を低下させたが、2λ10^<-4>gから10^<-3>gまでは逆に濃度依存性に皮膚温を上昇させる傾向があった。 末梢部皮膚温:E群では10^<-4>gで皮膚温を有意に低下(p<0.05)させる例が多く、その後の量の増加(〜10^<-3>g)は若干の低下を導いた。一方、T群では10^<-4>〜10^<-3>gまでE群に比し、顕著な濃度依存性の皮膚温低下がみられた。しかし、E、T両群ともに最大量2λ10^<-3>g投与では、直前の量10^<-3>gに比べ有意な皮膚温上昇(p<0.05)がみられた。なお、末梢部(右手、右足、左足、尾部)による差は殆ど認められなかった。 腹部血流量:E、T群ともに10^<-4>g〜2λ10^<-3>gまで濃度依存性の血流量の低下がみられた。しかし、この反応は投与直後でより顕著であり、投与後90分ではT群よりE群において血流量の回復がより顕著であった。
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