近年、食用キノコは健康・栄養・嗜好面が重視されるなか、栽培技術や流通機関の進歩に伴い、多種類生産され販売されている。キノコ類のうま味成分の一つである5'-ヌクレオチド類の加熱調理過程中の分解・生成機構については若干の知見が得られているが、保存条件がヌクレオチド蓄積に与える影響については、ほとんど知られていないのが現状である。そこで、本研究の1年めにあたる平成9年度では、加熱調理過程での5'-ヌクレオチド類の生成と、保存条件との関係を明らかにするために、保存中における鮮度低下の現象を視覚的に検討すると共にRNA量の変化を測定した。 試料は、収穫後の鮮度の良いシイタケ、シメジ、マッシュルームを用い、これらの傘ヒダ部や切り口が褐変するまでの期間、購入したトレーのまま、7・20℃で保存した。経日的に各温度で保存したキノコの外観、傘の開き具合や臭いを視覚的・臭覚的に観察し、さらに色差計を用いて傘ヒダ部や切り口の褐変・退色度を測定した。RNA量はSTS法に従ってRNA画分を分離し、Mejbaumの方法を用いてオルシノール反応を行った。 その結果、シイタケは20℃保存では2〜3日め、7℃保存では12日めで、マッシュルームは20℃保存では2〜3日め、7℃保存では3〜4日め位から傘ヒダ部や切り口に褐変が観察された。一方、シメジは7・20℃保存いずれも褐変はほとんど見られなかった。RNA量は3種のキノコいずれも保存中に減少傾向を示した。 平成10年度は保存中における5'-ヌクレオチド類の変動について分析し、視覚的に判断した鮮度とヌクレオチド蓄積との関係を検討する。
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