研究概要 |
血管内皮細胞が産生するエンドセリン-1は、強力な血管収縮作用を有する。またエンドセリン-1は、ノルエピネフリンの血管収縮作用を増強することも報告されている。一方、運動時には、活動筋で血流量が増加し、腎臓などの内臓諸臓器で血流量が減少する血流再分布が生じるが、そのメカニズムの詳細は不明である。本研究では、エンドセリン-1がこの血流再分布に関与するか否かをラットにて検討した。ラットにトレッドミル走(25m/min,45分間,0% grade)を負荷した(運動群)。その間、安静にしていたラットを対照群とした。運動直後に腎臓および肺を摘出し、それぞれの組織中エンドセリン-1濃度とエンドセリン-1のmRNAをreverse transcription and polymerase chain reaction (RT-PCR)法にて検討した。両群の肺において、組織中エンドセリン-1濃度とエンドセリン-1のmRNAの発現はどちらも違いがなかった。一方、腎臓における組織中エンドセリン-1濃度とエンドセリン-1のmRNAの発現は、運動群の方が対照群よりも有意に増大していた。運動時には腎臓の血流が著明に減少することが知られているが、腎臓におけるエンドセリン-1の産生増大がその一因である可能性が示唆された。本研究により、エンドセリン-1は運動時の腎臓の血流量の低下に関与する可能性が示唆され、またこのことが活動筋の血流量増大を引き起こす原因の一つである可能性が考えられた。
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