研究概要 |
本研究では,日常生活における歩行数を体力指標とすることによって,高齢者の骨量減少の個人差と体力との関係について縦断的な検討を行った。対象者は女性高齢者54名(60歳〜82歳)である。1995年に第一回目の踵骨骨量及び歩行数測定を実施し,その2年後に追跡調査を行った。踵骨骨量の測定には,超音波骨量測定装置(Lunar社製A-1000)を用い,Stiffnessの年間変化率を%△Stiffとして算出した。その結果は以下の通りである。1)全対象者の%△Stiffness平均値は-1.0±2.3であり,年齢との相関はみられなかったが,初回測定時のStiffnessとの間には有意な負の相関が認められた。2)初回測定時に歩行数が少なく,2年後にさらに歩行数が低下した者では,%△Stiffnessは-2.4±2.8であった。3)一方,2年間高いStiffnessを維持している者では,優れた体格及び活動的な日常生活が特徴として認識された。以上の結果から,日常生活の活動量が標準レベルから逸脱している高齢者では,骨量は加齢に伴う生理的減少の範囲外で推移している可能性が示された。したがって,体力低下度の相違が骨量減少の個人差に関与していると思われた。
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