研究概要 |
運動時に内部環境をコントロールする要因として,神経性および血液性の因子に加えて,機械的物理的刺激を受容する局所調節機構関与には不明な点が多い.本研究は,2年間の予定で身体運動による血流増加と骨格筋の収縮によるNOの産生が血流をコントロールしている可能性を追求しようとしている.すなわち,運動時の血流調節に対するNOの関与およびそのメカニズムを明らかにすること,およびNO産生という見地から急性運動やトレーニングによって血管の応答性に差異が生じるのかを解明することである. 本年度は特に,Wistar系ラットを用いてリング様に下行大動脈を採取し,内皮細胞の存在/非存在下でマグヌス装置を用いて血管収縮力の測定を行った.当初,運動による筋収縮の物理的影響を直接に受ける大腿部より抹消にある動脈を採取する予定であったが,径が細く測定に供し得なかった.なお,パイロットスタディとして3例急性運動負荷後のラットの血管に対する影響を評価したが,対照の非運動ラット(n=6)との差は見られなかった.引き続き生理学的測定としてNO合成酵素阻害剤の存在/非存在下においても追加実験を行う予定である.今後さらに,(1)ラット骨格筋の収縮によるNO産生能,(2)NO合成酵素の変動,(3)NO合成酵素のmRNAの発現の評価について検討する.また,これらに関して運動トレーニングあるいは急性運動を行ったラットと対照非運動ラットとを比較し,NO産生という見地から,急性運動やトレーニングによって血管の応答性に差異が生じるのかについても明らかにしたい.
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