卓球競技では、熟練者の多くが、「自分の打球直前のボールをみて、動作修正を行ったことがある」と指摘している。人間の視覚反応時間より短い時間内に視覚情報フィードバックするというこの指摘について、これまでに十分な検討は行なわれていない。そこで本研究は、卓球サービスのレシ-ブ時のラケットの動きの測定と、打球ごとのラケットコントロールに関する動作感覚の調査などから、視覚情報による打球直前の動作修正を実験的に検討することを目的とした。 本年度には、以下の成果を得た。 1.動作修正に関するアンケート調査 日本代表経験者を含む卓球選手48名を対象に、自由記述によるアンケート調査を行なった。その結果、回答者の89.6%にあたる43名において、自コートでのボールバウンドから打球までの約0.2秒間に、ボールのコースや回転に関する視覚情報による動作修正の経験のあることが明らかとなった。動作修正の頻度については、それに関する記述のみられた33名の中で23名が、「毎試合1回以上」と回答していた。 また、この調査結果から、ラケットの動きの測定実験において、被験者の打球ごとのラケットコントロールに関する動作感覚を短時間に把握するための質問紙を作成した。 2.ラケットの動きの測定実験 装置や構成などの検討を行なった。これにより、ラケットの位置およびラケット面の向きの測定に用いる電磁気式位置角度センサーについて、精度や外部同期の問題などを解決した。また、ボールの動きを詳細に測定する必要性が認められたため、新たに2台の高速度ビデオカメラを用いるように実験の構成を変更した。これらから、必要な全てのデータの高い精度での測定が可能となり、実験準備を終了した。 今後の展開:来年度初めに実験を行ない、データの収集を終了する。その後、従来の運動制御理論と実験データとの関連を考察し、研究のまとめを行なう。
|