本研究の目的は、卓球サービスのレシーブにおける視覚情報による打球直前の動作修正について、実験的検討を行うことであった。 日本代表クラスの卓球一流選手4名に対し、サービスに対するレシーブをフリック打法で30回とストップ打法で30回を行うように指示した。それぞれの打法による30回のレシーブは、あらかじめサービスの回転の種類を伝えた条件として、無回転に対する場合を10回、下回転に対する場合を10回、回転の種類を伝えていない条件として、無回転と下回転とを見極める場合を10回とした。被験者のラケットの動きについては、電磁気式位置角度検出装置により測定した。ボールの動きについては、2台の高速度ビデオカメラにより測定した。被験者の回転判別のタイミングとラケットコントロールに関する内観については、1回の打球ごとに質問紙を用いて調査した。 本研究では、これまで実験的に捉えることが困難であった「自領コートでのボールバウンドから打球までの間に、ボールの飛び方や回転をみて動作修正を行った」と指摘する一流卓球選手のサービスレシーブの動きのデータを得ることができた。これらにおける「自領コートでのボールバウンドから打球まで」の時間は、ストップ打法の場合が100〜190ms、フリック打法の場合が220〜260msであった。このときのラケットの動きは、回転判別を早期に終了した場合とはラケット面の向きの時系列変化パターンが異なるものが多かった。しかし、動作修正の意志決定が、選手の内観のとおり、打球直前の視覚情報を用いて行われたかについて十分に検討するには至らなかった。今後、動作修正の意思決定のタイミングを推定するためのデータとして、上肢の筋の電気活動などの測定を今回の方法に加え、視覚情報による動作修正の時間的可能性に関する実験的検討を継続する計画である。
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