申請者は、これまでの実験で、長管骨に局所的なメカニカルストレスを加えることによって、骨梁表面の骨芽細胞および骨に内在する骨細胞でオステオポンチンmRNAの発現が顕著に増加することを見い出した.そこで、今回、メカニカルストレスの負荷重量とオステオポンチンmRNA発現との関係を検討した。 実験には、生後15週齢の雄ラットを用いた。申請者が独自に開発した自動制御式のメカニカルストレス発生装置を用い、麻酔下において、ラットの右側下肢膝部(大腿骨遠位部および脛骨近位部)に最小加重0.5kgから最大加重5kgサイン波負荷を3Hzの加重頻度で10分間負荷した。その24時間後、剖検により、脛骨を摘出し、パラホルムアルデヒドによる固定後、脛骨近位部から厚さ数マイクロメーターの薄切標本を作成し、分子生物学的手法(in situ hybridization法)を行った.用いた遺伝子プローブは、オステオカルシン、オステオポンチン、オステオネクチンなどの骨組織マトリックス蛋白質で、組織内の局在と共に遺伝子発現細胞の同定およびその定量解析を行った. その結果、メカニカルストレスに対する骨芽細胞と骨細胞のオステオポンチンmRNAの発現は、負荷重量依存的に増加することが観察された。また、負荷重量3kgでは、オステオポンチンmRNAの発現は、骨芽細胞ではなく、骨細胞のみに見い出された.このようにメカニカルストレスに対する骨芽細胞および骨細胞の応答の閾値が異なる可能性が示唆された.
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