体温調節反応には深部体温や皮膚温などが大きく影響しているが、運動開始時などではこれら以外の要因(非温熱性要因:central commands、筋からの求心性入力等)が重要となる.本研究では非温熱性要因としてのcentral commandsが運動時の体温調節反応にどのように影響しているかを検討した.男子学生7名(年齢19±1才、身長170.9±1.9cmおよび体重63.2±1.5kg)に対して、water-perfusedsuitで皮膚温を37℃以上に保ち、体温調節パラメータ(食道温、皮膚温および発汗量)が一定になった後、受動的自転車運動と無負荷の能動的自転車運動をそれぞれ2分間実施した(回転数60rpm).測定項目は心拍数、酸素摂取量、食道温、平均皮膚温、局所発汗量(胸部)および筋電図であった。 受動的運動と能動的運動を比較すると、後者の方の発汗量が有意に多かった(P<0.05).また、受動的運動においても運動開始前と比較すると、少ない量ではあるが発汗量が有意に増加した(P<0.05).両運動中において食道温と皮膚温には顕著な変化は認められなかった.また、心拍数あるいはcentral commandsの大きさの程度を反映する自覚的運動強度も能動的運動の方が有意に高かった.これらのことから、運動時の発汗反応を大きく引き起こす要因として、centralcommandsが重要であることが推察された.下記の式よりそれぞれ影響する要因の割合を算出すると、発汗反応に及ぼす影響はcentral commandsが約65%で、それ以外の要因(筋の機械的受容器など)が約35%であった. 筋からの求心性入力の割合=(受動的運動での変化/能動的運動での変化)×100% central commandsの割合=100%-筋からの求心性入力の割合
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