研究概要 |
本研究は、スポーツ消費者とサービス組織との「サービス・エンカウンター」(Czepiel et al.,1985;Bitner et al.,1985)の動態分析を射程におさめることによって、スポーツ経営学の領野におけるサービス・マーケティング研究の意味と構造について明確にすることを究極的な目的としている。そこで本年度は、過去のスポーツサービス研究についてレビューし、参与観察法と質問紙調査法によって「スポーツサービス・エンカウンター」について実証的に構造化することを研究目的とした:福岡県立Aスポーツ施設における約2ヶ月にも及ぶ利用者の行動観察と、質問紙調査(341の有効回収標本)の結果、『(1)A施設に到着→(2)施設入口から駐車場へ→(3)駐車場に到着→(4)エントランスホールヘ移動(エレベータ-内を含む)→(5)エントランスホールヘ到着→(6)自動券売機で利用券の購入→(7)ゲート通過時→(8)ロッカールームヘ移動→(9)ロッカールームの利用→(10)施設サービスの利用(トレーニング室,エアロビクス室,リラクセーションルーム,浴室・サウナ,トイレ・化粧室)→(11)精算機・ゲート退出時→(12)スポーツ情報コーナー・掲示コーナーの利用→(13)ラウンジ・レストラン等の利用→(14)エントランスホールを出る→(15)駐車場を出る→(16)A施設を出る』といった16のサービス・エンカウンターが描出され、利用者のスポーツサービス・エンカウンターを視覚的にフローチャートとして構造化することができた。また、利用者は、これらの各エンカウンターにおいてA施設側と非常に満足もしくは不満な出来事・接触(critical incidents)を体験しており、その出来事の良し悪しによってトータルなスポーツサービスのクオリティを主観的に判断しているということを仮説として演繹することができた。 しかしながら、本年度は演繹された仮説(上述)や、各エンカウンターにおけるスタッフのコミュニケーション行動については分析できず、次年度に残された研究課題である。
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