コンピュータディスプレイ上に表示したキネティカルな成り立ちのことなる合目的的な複数の運動のアニメーションを被験者に観察させ、分類させる実験をおこなっている。この結果、キネティカルには大きな差異のある複数のアニメーションを被験者は積極的には区別しないことが明らかになってきている。 学習のなかで、見まね(あるいはさるまねとも)はもっとも低レベルな学習の形態とされる。しかし、ヒトがある運動を見まねしているときであっても、それは工学的な意味での見まねとはまったくことなる。運動のキネティカルな成り立ちについては観察者であるヒトはかなり鈍感であり、そのような感度の低い観測メカニズムを前提に工学的な見まねはあり得ない。 また、実際は、静的な図柄を観察するメカニズムと、動きを認識するメカニズムとは別物という結果を示している。つまり、動きを止めたスティックピクチャとして提示された図柄は十分に区別できるのだが、それらをアニメーションとして提示すると被験者は同じ運動と思ってしまう。静止画を認識する能力の延長に運動を認識するメカニズムがあるのか、それとも静止画を認識するメカニズムと運動を認識するそれとまったく別物であるかについては、今後の研究が待たれる。 アニメーションを観察中の被験者の注視点のデータを得るために、注視点観測システムを導入したが、思いのほか被験者の頭部が観察中に動揺するため、正確な注視点が得られなかった。頭部を固定する方法とスクリーンに注視点観測システムを固定する方法とのふたつを取り入れ、現在、実験をやり直してる。
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