研究概要 |
不慣れな運動あとに生ずる筋肉痛について,成人と子どもではその発現に時間的差異が認められる.この現象のメカニズムを明らかにするために,当初はヒトを用いた非侵襲的方法によって検討を加えた.しかしながらこの実験系では詳細なメカニズムの検討が困難であったため,急きょ実験動物を用いて筋サンプルを直接検討することを試みた.若齢マウス,成熟マウスの2群を用いて,筋に損傷をおこすような運動の後,筋サンプルを解析したところ,運動後における筋細胞膜の変性度において,両群ともに同じような運動を負荷しても若齢群の方が変性度が小さい可能性が示唆され,この傾向は運動直後から認められた.そこで近年筋損傷の急性期応答物質として着目され,筋の再生過程を調節する物質のひとつと考えられているサイトカイン類について,両群間に差が認められるのではないかという仮説を立て検討を行ったところ,若齢マウス群が成熟マウス群よりも応答が数時間速く,筋当たりの含有量も微量ではあるものの多い傾向が認められた.サイトカイン類は筋痛の原因物質のひとつとして考えられているプロスタグランジンの産生にも影響を及ぼすことが近年報告されているため,今後の研究課題としてはまず運動後数時間の急性期における筋細胞膜とサイトカイン類の関係と,サイトカイン類がプロスタグランジンの産生にどのように関与しているのかについて若齢マウスと成熟マウスの間に差異が存在するかについて検討を行う必要があると考えられる.
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