“子どものからだのおかしさ"の中で指摘されている“とんでくるボールをうまく捕れない"“ボールが目にあたることが多い"というような問題は、複雑な運動と視覚情報とがうまく連携しあって運動を制御できないことが原因で起こると考えられる。つまり、眼から入力された場所的、時間的情報と運動の結果として手の到達する場所とが一致していないわけである。現代の子どもの眼と手の協調性の能力はどの程度のものなのであろうか。眼からの入力情報と身体の運動制御の“不一致"の原因はどこにあるのであろうか。本研究では、特に運動場面における子どもの眼と手の協調性能力の基礎資料の収集を目的とし、“子どもの運動視機能と手の協調性の関係を様々な観点から考察することを目的とした。 そこで、まず、子どもの眼と手の協調性に関する分析を行う前に、運動視機能の基礎データを収集するとともに、眼と手の協調性が必要とされるボールゲームにおける知覚スキルと運動視機能の関係について検討した。調査対象者は、中学校2〜3年生の男女ハンドボール選手28名(13.79±0.42歳)で、これらを「選抜群」「正選手群」「補欠群」の3つの技能別に分類した。運動視機能の測定項目は、静止視力、動体視力、深視力、瞬間視であり、知覚スキルの分析のために13分間のハンドボールゲームのVTRを用いた記憶再生検査を行った。 運動視機能について、調査対象者の平均値は、静止視力が1.2±0.4、動体視力が0.80±0.31、深視力が18.7±13.8、瞬間視の合計点(8ケタ、10回試行)が36±13点であった。動体視力、深視力においては各技術レベル間(p<0.05)に有意な差がみられ、技術レベルが高いと評価される子どもほど動体視力、深視力の値も高い。知覚スキルと運動視機能との関係については、現段階では顕著な結果は出ておらず、サンプル数を増やし、さらに分析・検討を行う予定である。また、サーカディック・フィクセタ-を用いた運動視機能テストも行う。
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