本研究の課題は、(1)ESM調査によって個人の日常生活における具体的経験のデータを収集し、その経験に即して現象学的にレジャーの概念を定義することであり、(2)この操作的定義に拠り、レジャーの量的、質的充実度を数量的に把握して、“レジャー生活の充実と生活全般の質的充実の関連性"について検討することであった。 このため、女子大学生と主婦を対象にESM調査を実施し、加えて、QOLレベルやレジャーの質的充実の把握を目的としてPurpose in lifeテストやLeisure Boredome Scale等によりなる一般的な質問紙調査も併せ行った。 1.客観的状況要因(活動内容)とレジャーである/ないを段階的に評定するレジャー・ラベリング尺度の一致・対応についてみると、レジャー性の知覚は「マスメディア接触」を中心とした消極的レジャー活動で最も高く、「スポーツ」「教養・創作活動」など積極的レジャー活動に対するレジャー性の評価は相対的に低いものであった。 2.レジャー/非レジャーの判別に寄与する感情、知覚を探り、相対的重要性を検討したところ、レジャーの定義づけにおいて最も有力であるのは、「楽しさ」であり、次に「選択・決定の自由」の知覚であった。気分・感情要素の「肯定的感情」と「リラクセーション」はそれについで有力であった。レジャーの経験は、楽しさ、自身が自由に決定したという自己決定感、くつろぎ感、幸せな明るい気分で表される。これまで重視されてきた、高度な能力の行使に伴う集中(没入)、達成や有能感といった体験は、レジャー性の知覚に寄与するものではなかった。 3.レジャーの量的、質的充実が生活全般の質的充実に与える影響について、PILテストによるQOL得点とESMデータの相関分析を行ったところ、量的な面では、レジャーの生起頻度(%)と全般のQOLレベルには殆ど関連性はなく(r<0.1)、また、レジャーの質的充実とQOLの相関も弱いものであった。
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