研究概要 |
本研究の目的は,宿泊機能の集積過程と集客圏を指標として,東北地方の都市群システムとその再編過程を解明することである。 平成9年度の研究内容と経過は以下のとおりである。 1)対象とする東北地方15都市の宿泊機能のうち,従来の研究において発表したホテル営業の集積規模について,現地調査をとおして新規に確認し,とりわけ仙台と盛岡,秋田については,1970年代以降の集積過程を詳細に把握した。ホテル営業の集積規模と集積過程には,地域的都市システムと高速交通体系の変化が反映している。 2)宿泊機能のうち,旅館営業の集積規模については,旅館組合名簿と現地調査による把握を試み,仙台と盛岡,秋田をはじめとする県庁所在都市に関するデータを収集した。1970年代以降の減少過程については,過去の住宅地図と現地調査をとおして,データの収集・整備・分析を続行している。都市における旅館営業の減少は共通にみられ,とくに市域中心部では,都市化・立体化の進行にともなう立地条件の変化に関連している。 3)都市内部における宿泊機能の立地特性を検討するために,仙台都心部における土地利用調査を実施した。 4)宿泊機能の集客圏については,仙台と盛岡,秋田から事例施設を選定し,聞き取り調査を実施した。この調査と分析は,おもに平成10年度の課題となる。 東北地方の都市において,ホテル営業を主体とする宿泊機能の集積が進行するのは1970年代前半以降である。集積過程の時期的差異と動向には,東北地方における高速交通体系の整備が深く関係しており,業務・観光流動を束ねる広域的な結節点の変動が読み取れる。平成10年度には,業務・観光流動と東北地方都市群との関わりを集客圏および利用形態の側面に重点を置いて現地調査を続行する。
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