本研究では、研究代表者らが既に行った、長野県出身の第一次ベビ-ブーム世代に関する居住経歴調査の分析結果を踏まえ、その一般性の検証を主たる目的として、第一次ベビ-ブーム世代よりも10年前の世代および10年若い世代を対象とした調査を行った。 調査結果を分析し、3つのコ-ホ-トについて比較検討したところ、「長野県にずっと住んでいる者」「他県に移動し現在でも居住している者」が減少する一方、「学卒Uターン」「転職(勤)Uターン」の経験者は着実に増加し、特に「学卒Uターン」の割合は大きく増加したことが明らかとなった。また帰還先を市町村単位で検討したところ、郡部出身者がかつては帰還先として市部を指向していたのが、近年では自分の出身町村に帰還する傾向があることがわかった。またこれと対応するように、これら出身町村への帰還者の勤務先が自町村から他市町村へ変化してきている。これはモータリゼーションの進展に伴い実家からの通勤が容易となったことから、「帰還先、勤務器とも近隣中心地」から「帰還先は実家、勤務先は近隣中心地」というパターンが増加した結果と考えられる。また「Uターン者」増加の背景として、帰県に伴う生活条件の悪化、というかつての状況が緩和されていることが予想されるが、確かに「Uターンに伴う収入の変化」に関する質問から、最も若いコ-ホ-トではむしろ「増加した」と答えた者がやや多くなるなど、この点を裏付ける結果が得られた。一方「転職(勤)Uターン」者のどの年齢層においても、最初の就職時から3〜7年の付近に「Uターン」のピークが集中しており、世代を問わず比較的早い段階において決断した者が「Uターン」移動の中心をなす、という結論を得た。
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