研究概要 |
本研究は、海岸線や河川沿いに細長い平野部が存する地域などで、1次元上(線形)に展開する中心地システムを理論的・実証的に検証するものである。今年度はまず、線形中心地システムの理静的な分析として、立地-配分モデルを用いた中心地理論のモデル化と仮想地域における数値実験を行なった。そして、研究対象地域のひとつである徳島県の吉野川流域に赴き、資料の収集と現地調査を実施した。その結果、以下の知見が得られた。 1.クリスタラ-の中心地理論における供給原理のモデルによれば、平面上に需要が分布している場合、3つの下位中心地が1つの上位中心地に包摂されるという、いわゆるK=3のシステムが構築される。しかしながら、需要分布が1次元上の場合、中心地の階層間の関係はK=2のシステムになることが理論的に立証された。 2.線形計画法ソフトウェアLINGOを用いて、1,000の需要地点および3階層からなる50の中心地の配置をシミュレートした。その結果、モデルより導出される、様々な需要分布上における中心地システムの特性は、需要分布の空間的次元と密接に関係していることが分かった。具体的には、(1)2次元の需要分布上ではほぼK=3のシステムになること、(2)1次元の分布ではほぼK=2のシステムになること、(3)1次元から2次元に推移する需要分布上では混合階層システムになること、などが数値実験から確認しえた。 3.研究対象地域(徳島県吉野川流域)での資料収集・見地調査の結果、(1)河岸段丘・扇状地での集落の発達、(2)吉野川の水運・街道の動向、(3)藍染・葉タバコなどを中心とする集散地・中心地の変遷、などの中心地システムの動態的側面に関する基礎的な概観を得ることができた。 なお、地図データの作成は現在進行中であり、残された分析・調査とともに次年度へと継続する所存である。
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