今年度は、まず、ケニアにおいて様々な生業のもとにどのような土地制度、土地利用慣習が行われ、それがとくに半乾燥地域の環境変化にどう関わってきたのかを検討するために、土地制度と農村環境・社会構造に関する欧米の文献・事例研究の収集を進めた。牧畜と砂漠化、傾斜地における土壌流出の問題を始めとしていくつかの研究を見出し得たものの、そうした環境変化を土地制度という社会的視点から体系的に扱った文献は少なく、ケニアにおける環境と制度の関連は、検討の余地を残した研究課題であることが改めてわかった。これに並行して、ケニアの土地保有に関する専門書を検討し、土地制度の変遷史を暫定的にまとめつつあり、来年度もこれを継続する。また、同じような環境条件と問題をもつ北隣の国スーダンの食料、環境、内戦、難民問題に関する文献を収集し、ケニアとの比較研究の端緒として検討を始めた。次に、ナイロビ大学のスタッフから本研究計画の内容について助言を受け、政府機関等から関連文献等の情報をえるために、また将来の調査候補地周辺を視察するために、1997年12月に2週間程度ケニアに赴いた。さらに、ケニア中央部のニェリ県、ライキピア県の高地湿潤地帯〜低地半乾燥地帯における土地被覆変化を分析する目的で1994年度奨励研究(A)によって入手した1986、87、92年の衛星データの分析を継続した。また、既に現地調査に着手しておりグラウンド・トゥル-スが可能であるタンザニア北東部高地について同じく衛星データの分析を行い、手法の習得に努めた。
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