研究概要 |
本研究は、山地源領域における降雨流出機構に関して,多くの流域に対して適用可能な経験則を得ることを最終目的としている.本研究では流域の場の条件が,降雨流出過程および水質形成過程に及ぼす影響を明らかにすることによって,上記の研究目的を達成しようと考えている.研究対象として,長野県天竜川支流の小渋川源流および与田切川源流を選定した.小渋川源流域は中古生層の堆積岩からなり,与田切川源流域は花崗岩からなる. 本年度は両流域に設定された水文試験流域において,河川流量の連続測定,斜面土層構造の観察,土壌水の圧力水頭の連続測定,および降水,土壌水,河川水の定期的なサンプリングを現地において実施した.採取された水サンプルは実験室に持ち帰り,本年度購入のハ-ソナルイオンアナライザーによって無機溶存イオン濃度を,また質量分析計によって水素・酸素安定同位体比を各々分析した.この結果,小渋・与田切両試験流域において,斜面土層中および基盤中の地中水の流動過程・水質形成過程,また降雨時の河川流出特性および河川水質の形成過程に関して,対照的な現象が見出された.この結果の一部を,1997年12月にサンフランシスコで開催されたアメリカ地球物理連合秋期学会において報告し,流域の地質構造と降雨流出過程の関係について,種々の有益なコメントを得た. 来年度は,得られたデータの解析を更にすすめるとともに,現地における補足調査を実施し,小渋・与田切両流域における地質構造と降雨流出過程の関係を明らかにし,さらにいわゆる山地流域の降雨流出過程に関してより一般的な知見を導き出すことを目標とし研究を進める.
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