研究概要 |
本研究の最終的な目的は次の三項目,すなわち1)測定値の精度・確度・再現性の検討と向上といった測定手法自体の洗練化に関すること,2)チタン磁鉄鉱の主成分がテフラの特徴づけに有効であるか否かの検証,これはテフラごとまたは同じテフラでもフォールユニットの違いや保存条件によりチタン磁鉄鉱の主成分組成がどの程度変化するかの実体を知ること,そして3)実際にテフラ同定に対する応用研究,の以上よりなる.本年度の研究実施計画は,これらの中の1)にかかわる測定方法の改良と,2)の主成分測定の有効性を検証するためによく実体の知られたテフラの測定事例を増やすことからなる. 1)については生の測定値をどの様に処理し,いかに評価するかを鉱物学的な従来の研究を参考に検討した. 2)については赤城火山起源のプリニアン軽石,北アルプス起源の大町APmテフラ群,飯縄火山起源のプリニアン軽石などを対象に測定を行なった.赤城火山起源のテフラ群については,給源火山が同じであるにもかかわらず,テフラごとまたは同じテフラでもフォールユニットの違いを反映して異なる主成分を持つことが明らかとなり,テフラの特徴づけに有効であることが示された.一方で,大町APmテフラ群については時代を異にするテフラ間でも主成分に変化が現われず,各層の識別に有効でないことが示された. 来年度も目的2)のために引き続き事例を増やしてゆくつもりであり,その準備として九州において桜島火山起源の降下軽石層およびその周辺カルデラを起源とする大規模火砕流堆積物,伊豆半島ではカワゴ平火山起源の火砕流堆積物の試料採取を行なった.
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