平成9年度については、以下の成果が得られた。 ・理科、算数・数学の教科書分析より、物理分野で用いられるグラフとしては、横軸に時刻、縦軸に位置という次元の異なる物理量を与える例が多くあるものの、数学分野では次元を考慮しない関数の学習が中学校段階以降に多くなっていることが判明した。 ・茨城県の公立中学校3年生156名を対象として、横軸に時刻、縦軸に位置という次元の異なる物理量が関係したグラフ読み取りと作成に焦点をあてたグループ活動による実験授業を行った。この実験授業では、ビデオ記録、および事前・事後調査を行った。それらの結果より、時刻と位置のグラフのように次元の異なる軸をもつグラフについても、両軸ともに位置を示した同次元のグラフとしてとらえている生徒が多くいることが明らかになった。これは、グラフを絵として把握している児童・生徒がいるという質問紙を用いた先行研究とも一致する結果であった。 ・以上より、新しいグラフスキル分類項目として、「軸の特定における次元把握」を抽出することができ、グラフ認知過程モデルの軸の特定に関する文脈依存性についての客観的データの一つを得ることができた。 平成10年度は、「軸の特定における次元把握」をさらに特定するためにコンピュータによるシミュレーションを用いたドライラボと、関数電卓と位置測定装置を組み合わせた実験課題を用いたウエットラボを基にして、さらに客観性をもった分類項目確定と認知過程モデル作成へ研究を進ませる予定である。
|