研究概要 |
申請者が提案した新しいテスト理論、ネットワーク型テスト理論を用いて、コンピュータ・テスト・システムを構築することが目的である。現在、課題となっているのは、小規模のアイテムバンクの場合、実用的ではあるが、大規模なアイテムバンクの場合は実用的には不可能であることである。理論的にはその計算アルゴリズムがNP-hardであることに依存しているが、計算の高速化アルゴリズムが急務となっている。今回、複雑な構造を持つネットワークをより簡便な独立構造に変換するアルゴリズムを提案している。これにより、テスト構成などにかかる時間が短縮され、NP-hardの問題も解決される。 もう一つの課題は、大規模なアイテムバンクのネットワーク構成の難しさである。確率ネットワークは当初、エキスパートの知識により構成することを主な手段としていたが、ここではテストデータによる構成の方法を提案している。第一の方法は、統計的意思決定理論による方法で、ネットワーク構成を教師の意思決定理論の枠組みで定式化したものである。これにより、同形な構造を得ることができ、テストの予測効率を高めることができる。もうひとつの方法は、構造モデル推定のためのモデル情報量基準を作ることである。 ここでは、ベイズによりモデル構造の事後確率を最大化する手法を提案している。 この基準はBIC,MDL基準などの従来の基準に比べて理論的にも新の構造を求めることができる確率が高いことが保証されている。また、シュミレーションにより、その効率を調べた結果、真の構造を求める確率が最も高いことが実証されている。 さらに、これらを応用して教材のネットワーク構造を統計的に推定する方法も提案している。これにより、教育的なフィードバック、および計算の最適性も保証することができるものであると考えられる。
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