研究概要 |
本研究の目的は,マルチメディアデータ管理・運営における記憶に基づく推論(Memory Based Reasoning:MBR)の適用に関する研究を行うことである.ユーザがマルチメディアデータ,特に画像データを登録検索を実行する場合,画像に対する文字情報(作者・題名)だけではなく,数値情報(年代の範囲・大きさ)さらには,叙情情報(どのような感じ)なる情報を利用すると考えられる.文字情報に関しては,従来のデータベース管理手法で十分対応可能であるが,数値情報,特に叙情情報に関しては,ユーザのもつ情報の曖昧性が極めて重要な要因となる.一方,従来のMBRでは各データを複数の属性に対する2値データの列として保存し、ユーザの入力データとの類似度の計算結果により推論結果を提示するが,この手法では上述の曖昧性の高いデータを表現・管理することは不可能である.そこで,本研究の目的は,(1)曖昧性の高いデータに対応可能なMBRの理論の構築,(2)この理論を実装したマルチメディアデータ管理・運営を実行するシステムの構築,の2点にある.平成9年度は,現在までの曖昧性の高いデータに対応可能なMBRの理論の構築に関する研究を継続して行い,理論的基盤を確立した.具体的実績は次の通りである.MBRにおけるデータの類似度の計算はデータに対する重み付け手法が中心的課題となる.従来から2値データに対しては,ハミング距離などの考えを応用してプール演算の範囲で比較的容易に重み付けをすることが可能である.しかしながら,本研究が対象としている曖昧性の高いデータはファジィ理論的にはファジィ数,数理統計的には区間データであるため,プール演算で処理することは不可能である.そこで,本研究では,各データに確信度という分布を付随させ確率分布の演算として重み付けを行い,理論的には既存の重み付け手法を拡張したものであるという知見を得た.さらに,既存の重み付け手法と本研究での重み付け手法との相違点を計算機上でのシミュレーション実験によって検証し、その結果,本研究の提案手法は属性間の相関性を考慮した場合には,従来手法と比較してデータの分類能力という観点から優れているとの結果を得た.平成10年度は,理論(重み付け手法)を実装したマルチメディアデータ管理・運営を実行するシステムの構築を行う.
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