本研究では、文章を理解する過程における背景画運動の影響を調べると共に、どのような条件で学習効果が挙げられるのかを検討した。通常の動画像では、画像の動く速度や画像内容などの違いが大きく、十分な検討ができない。そこで、本研究では仮現運動であるランダム・ドット・キネマトグラムを利用して、画像の空間周波数や輝度などを制御し、検討を行った。 (1) 背景画像の運動速度と運動方向が読み速度に与える影響:横書きと縦書き文章を音読する課題において、背景画像を縦または横に4段階の速度で振動させた。その結果、文章の記述方向に関わらず、横方向では23deg/秒の速度で音読速度が有意に低下した。また、縦方向の運動では、運動速度に応じて音読速度が連続的に低下した。音読速度の低下が、横書き縦書きで変わらないことから、視覚的な特性による変化であると考察した。 (2) 音読時の視点移動の検討:音読速度による結果をさらに検討するために、音読時の視点移動を検討した。その結果、横書き縦書きに関わらず、縦方向の視点移動が全体の約7割を占め、縦方向の眼球運動が多いことを示した。また、背景画面の運動速度による眼球の移動距離への影響を検討した。縦方向の移動距離は、背景画面の横運動と縦運動との間で有意に差があった。また、一部の結果には運動速度による影響も見られた。一方、横方向の移動距離は、背景画の運動速度や運動速度による変化が小さいことを示した。これらの結果について、眼球追従反応において視野画面の運動方向に対する、眼球の選択性があることとの対応について考察を行った。 これらの結果を基に、画面提示における文字スーパなどの文章提示を行う場合の、留意点を検討し、研究をまとめた。
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