本研究は、算数科の同一の課題をペアによる協同的状況で問題解決したときと、学級全体で問題解決したときの、問題解決の過程とその所産を比較し、各々の形態の特徴を明らかにしようとするものである。 平成9年度は、小学校3年生と5年生を対象にして、ペアでの共同学習に関するデータの収集、およテンタティブな分析を行った。(平成10年度に、学級全体での話し合いを行わせ、本年度試みたペアでの問題解決と比較検討する計画であるため、ここではペアでの共同学習のデータの素描を報告するにとどめる。) 入手したデータは、各児童の学力水準、構成されたペアの成績の高低、仲の良し度の高低に関する資料、事前テスト、事後テストの結果、話し合いによる問題解決時の会話記録、事後テストの結果、である。 主な結果としては、以下のことが明らかになりつつある。 (1)従来の算数科での問題解決のように、一つの答えを求める課題とは異なり、本研究で用いたような「解くことのできない」問題を与えた場合でも、学級の2〜3割程度の者(概して算数学力の低い者)が、問題文中にある数値を操作して、数値として答えを出していた。反対に、「この問題は解くことができない」という「正答」を話し合いの前に持つ子は、算数の学力の比較的高い子の中に多くみられた。 (2)ペアでの話し合いでは、多くのペアで正解にいたるが、その過程は様々である。その過程には、学力の高低よりも仲良し度の高低の影響がつよいようであった。 (3)話し合いで、「解くことのできない問題の存在」に一度気づくと、「解くことのできない問題」に気づきやすくなるが、解ける問題を「解くことができない」と判断する反応も若干見られた。
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