研究概要 |
現在,世界には約162万人の日本語学習者が存在すると言われている。また,国際社会における日本の役割が重要視される中で,海外における日本語教育への需要が年々増加の一途をたどっている。そこで,本研究では,我が国で数多く開発されてきた日本語学習教材を海外在住の日本語学習者に提供できるシステムを開発することを目的とした。 本年度の研究では,情報通信網を活用した教材提供サービスを構築するために必要となるネットワーク環境を整備し,日本語学習支援システムのプロトタイプを試作した。作成されたプロトタイプの試験的運用を開始し,システムの教育的評価を実施した。 また,日本語教育の分野では,入門期の学習者を対象に使用頻度の高い語彙を体系的かつ効果的に教授する工夫がなされており,語彙の使用頻度は日本語教材で提示される語彙の選定および提示順序を決定するための基準となり得る。そこで,本研究では,活字メディアを対象に,語彙の使用頻度調査を実施した。具体的には,新聞および雑誌を対象に漢字の使用頻度を集計し,活字メディアの相違と時代的変化による漢字使用実態の差異を検証した。その結果,日本語における漢字使用の特徴は,メディアの相違や時代的変化に影響されることなく,高い頻度で安定的に使用される漢字が存在することが明らかになった。このような高頻度漢字を教授することは,短期的に漢字の習得が求められている日本語学習者に対して,教育的効果が大きいことが期待できる。こうして得られた知見に基づいて,日本語教育支援システムを開発するすれば,有用な学習教材を手にすることが期待できる。 本年度実施した語彙調査とシステム評価の結果を踏まえて,次年度では,学習支援システムを完成させ,日本語教育場面での本格的な運用を開始する。
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