本研究では、「ネットワークを利用した科学の学習環境のデザインとその質的研究」をテーマに以下のことを行った。 本研究の目的は、平成8年度に奨励研究(A)の助成を受けた「教育におけるネットワーク環境設定の基準作成の基礎的研究」の研究成果をふまえた上で、ネットワークを利用した学習環境(子どもと科学者の対話の場)をデザインし、そこで起こった学びを質的に明らかにすることである。そこから最終的には実際にネットワーク環境を教室に持ち込み社会へ開くときの学習環境の指針を作成することを目指す。本年度は特に、分析・考察のためのデータ収集の環境設定とデータの収集を行った。 1.教育実践の参加者の設定 東京都立明正高等学校の吉岡有文教諭の協力を得、吉岡教諭の担当する物理を選択した2、3年生の生徒を対象に実践を開始した。科学者は、(財)数理科学振興会の主催する夏期セミナーの参加経験者で組織する湧源クラブから16名の有志を募って回答者集団を組織した。 2.ネットワーク環境の設定 明正高校の物理実験室に今回の実践に適用するようインターネットへのアクセス環境を整備した。その際に、今回備品として申請したハードウェアおよびソフトウェアを用いた。 3.学校における環境調査 明正高校での本実践研究に関する授業、教室や廊下の掲示物、コンピュータなどの機器の設置状況と管理状況に関して、ビデオ撮影、写真撮影、関係者への聞き取り調査を行った。また、生徒のアクセス状況とその内容についてデータ分析を開始した。 4.科学者の学校訪問と方針会議 申請者のこれまでの研究成果から、子どもとネットワーク上で対話をする科学者は、学校訪問という形で子どもに実際に対面しないと対話が起こらないことがわかっていることから、科学者十数名の学校訪問と方針会議を明正高校で行った。
|