学校不適応の児童生徒の増加に伴い、養護教諭の存在が重要視されつつある。しかし、養護教諭は基本的に各学校に一人しかいないため情報の共有が難しい。そこで本研究では養護教諭が情報を共有できる広域ネットワークを利用した保健室用システムの開発を目指した。本システムは、(1)「児童生徒への対応のデータベース」(2)「養護教諭のための自己理解システム」の2つのサブシステムから成っている。それぞれの特色は、(1) プライバシー保護が重要である保健室用データベースは、使用する人(養護教諭を中心に、学校カウンセラー、一般教諭など)が知ってもよいレベルが設定され(ユーザレベル)、使用するユーザによって、見ることのできる情報と見られない情報のある、すなわち階層セキュリティを持つシステムである (2)相談相手が少ない養護教諭が自分自身を見つめ直す機会となる「自己理解システム」をネットワーク上に構築したことにより、養護教諭は時間的に自由に利用でき、また掲示板や電子メールを利用して養護教諭同士がお互いに横のつながり(連携)を持ち、お互いに助け合える機会を持てるシステムである であるが、昨年度に(1)については階層セキュリティのモデル化を試みたこと、また(2)についてはシステムを試作してローカルで試用した結果を受けて、本年度はシステムの統合及びネットワーク上での実用をはかった。そしてユーザ(養護教諭)に対して、調査用紙によるソフトウエア的評価を実施、その分析を行い、さらに実際にネットワーク上で複数の人が接続したときの負荷評価を行った。そしてシステムの改良点を考察した。今回、ユーザの評価は調査用紙を配布する方式によったが、これもネットワーク上で常時収集すれば、常にユーザの声が活かされたシステム改良をはかることができると思われ、次年度以降の課題としたい。
|