創造的活動によるスキーマや映像に関連する地域への関わりが映像視聴に影響を与えるという仮説をもとに実験をすすめている。本研究では、より多様性のあるスキーマを持つ被験者を得るために、インターネットを利用し、コンピュータネットワーク上で実験を行う。 本年度は富山県下と大阪府下の小学生20名を対象に予備実験を行った。その結果、居住地域への関わりによる映像視聴の影響は顕著には見られず、事例として児童による映像の分類の違いを挙げるにとどまった。例えば「水のある風景」を見て、それを「川」であるか、「湖」であるか、「海」であるかは被験者のあらかじめ持っている概念によるものである。そのなかでも、富山県下の「海」に近い地域の被験者は、京都・嵐山の「渡月橋と桂川」を写した「水のある風景」をも「海」と認識した。これは「渡月橋⇔桂川」という嵐山に関するスキーマ(成人の場合、生育もしくは居住地域でなくともメディアを通して、また訪問するなどして形成される場合が多い)が作動しなかったと考えられる。 来年度は、今年度の実験から得られた分類カテゴリーを利用し、実験者側からいくつかカテゴリーを提示し、実験映像がそのカテゴリーに適当であるかどうかを判断する実験を行う予定である。この実験より居住もしくは生育地域に関わりなく働くスキーマが導出され、また、創造的活動によるスキーマとの関連も明らかにすることができる。 また、今後の技術の進歩を鑑み、WWWによるインターネット上での実験に加え、VOD(ビデオ・オン・デマンド)システムの利用も試みる。
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