人間の脳における情報処理モデルとして、最初に「脳の数理モデル」に注目したのは、McCulloch&Pittz(1943)らである。彼らは、脳の基本構成素子であるニューロン(神経細胞)の単純なモデルを作り、その論理演算系としての万能性を示した。 統計的モデルという観点から捉えると、ニューラルネットワークモデルは一種の非線型回帰モデルと見なすことができる。また、回帰モデルということは特に統計的な仮定を考慮しなければ広くは関数近似である。本研究で取り扱う階層的ニューラルネットワークモデルは本質的には多変数関数の近似問題を解くモデルと考えられる。 これらの観点から、データ解析に階層型ニューラルネットワークモデルを適用し、内在するデータ構造を多変数回帰関数として表現しようと考えた。 一方、大学入試センターには、これまで実施してきた通算20回におよぶ入試データが保存されており、その秘匿性から解析されることが少ないが、想像を越える労力を払って収集・管理されたデータ塊が手つかずの状態で保管されているのは非常に惜しいことである。そこで、この入試データを大量データかつ実データとして捉え、これの解析道具建てとして階層型ニューラルネットワークモデルを持ち込み、今まで明らかにされていないデータ構造を特に非線型関数の立場から明らかにしていこうと考えた。 具体的な作業としては、過去のニューラルネットワークに関する研究のサーベイを行い、その有効性と問題点を把握した。その上でワークステーション上に解析システムを作製し、ある年度のデータに対して解析を行いその実用性を確認した。また、これら研究成果を国内(2回の科研集会)、国外(日韓統計会議)の研究会で発表し、他の研究者と広く情報交換を行った。
|