本年度は、近藤(1996)で行った予備実験をもとに提起した仮説の検証を行うという研究目的のために、以下の段階まで研究を進めた。 1.対話型仮想空間認知の実験用刺激材料を制作した。 2カ所の仮想空間を制作するため、両エリアの数十地点をノードとしその地点のパノラマ写真撮影、デジタル化、PhotoVR化、リンクの手順で仮想空間を構築した。 2.操作履歴の自動記録方法の開発した。 被験者がこの仮想空間内をたどった履歴を採取するため、経過時間、ノード名、ナビゲーションタイプ、左右角度、上下角度、画角を記録可能なプログラムを開発した。 3.次の3つの課題において、対話型仮想空間認知の実験を行い、解決過程を分析した。 1)材料1(被験者にとっては既知の空間)内を決められたコースでたどる。 2)材料2(被験者にとっては未知の空間)内を決められたコースでたどる。 3)材料2空間内に置かれている物(公園のベンチ)の個所を別紙の地図に記入する。 4.実験結果として以下の知見が得られた。 ・仮想空間での空間定位には個人差が大きい。 ・仮想空間の既知、未知には空間定位にあまり影響を及ぼさない。 ・仮想空間内でも現実場面と同様の迷子現象が生じる。 ・移動時に方向転換が必要な場合に地図との整合性が取れなくなる被験者群がある。 ・仮想空間探索時の方略が空間定位に影響を及ぼしている可能性があり、その方略としては、ランドマークの設定、地図を回転させ進行方向を合わせる等があった。 5.その他、市販ソフトにおける対話型仮想空間(PhotoVR)の構造を分析した。
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