研究概要 |
従来、重症心身障害児・者(重障児・者)の視機能については、受容系-処理系-出力系の認知心理学的枠組から検討され、彼らの障害特性やライフスタイルの独自性は考慮されなかった。生態学的に妥当なデータに基づき効果的な教育プログラムを開発するためには、視覚系を「眼-頭-姿勢」のマクロシステムとして捉えるアフォーダンス理論の枠組が有効である。彼らの独自性として、(1)仰臥位・腹臥位姿勢、(2)介助者の存在を指摘できる。本研究では、これら2点の独自性を変数とした条件において生体反応と行動反応を測定し、彼らの外界探索過程をアフォーダンス機能の観点より検討することを目的とした。本研究の行動反応分析に必須の動画像解析システムは,購入できなかった.行動データの定量化が困難なため,姿勢面の検討は除外した.1.対象児:重症心身障児施設に入所する重障児・者10名.2.刺激:一系列の人関連複合刺激。S1を「人の出現」、S2を「再出現と働きかけ」としてS1-S2間隔5.5秒で20試行反復呈示する。3.測定条件:介助者の有無による2条件.4.記録:(1)生体反応(眼電位図,心電図を磁気記録)(2)行動反応(2台のカメラより頭部中心、全身中心のVTR録画)。5.分析・処理:(1)生体反応(A/D変換後、眼球運動および一過性心拍反応を定量化)。(2)行動反応(行動観察より注視行動生起率、平均持続時間を算出)。4.結果と考察:心電図記録と行動反応より,介助者介入が反応促進に正の効果をもつ者を認めた.介助者の意図に反して介助者を注視する者を認め,共同注意機能との関連性が示唆された.今後,CRTによる3次元視覚刺激の呈示とその際の視線移動の時系列分析を行い,注意の喚起・維持機能との関連で検討を行う.
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