研究概要 |
平成9年度は、教育開発のための素材の適切性を検討するための基礎データ収集と、教材としての有効性や適時性を検討した。研究対象は、新潟県刈羽郡刈羽村立刈羽中学校3年必修技術・家庭科栽培領域である。本研究では、科学教育と技術教育の連携化をはかるために開発した「環境保全や共生概念を導入したカリキュラム」により教育実践研究を行った。研究成果は、平成9年10月24,25日に開催された第36回関東甲信越地区中学校技術・家庭科研究大会で発表した。 教材化のための素材は、環境保全教育の観点から、地域素材である「刈羽節成キュウリ」「刈羽豆」を選定し、教材研究を行った。特に「刈羽豆」などのマメ科作物は、空気中のチッソを固定する能力を有する根粒菌と共生するために、マメ科作物の根に付着した根粒を生徒が観察することができた。しかし、VA菌根などの内生菌根については、野外における採集で胞子密度がきわめて低かったために採集と分離の実用性とともに、中学生段階における観察実習を容易にするための工夫が大きな課題となった。 そこで、有機質肥料を使用した栽培を通じて、環境保全や微生物の役割を認識できる栽培教材研究を行った。具体的には、「化学肥料のみを使用した栽培区」と、「有機質肥料のみを使用した栽培区」で、キュウリ、エダマメ、ダイコンの比較栽培を行った。具体的には、家畜のふん推肥などとともに、給食残飯などの生ゴミからの推肥づくりと、有効微生物の教材化を行った。有用微生物の多くは細菌類であるが、中学校の実態や生徒の発達段階を鑑みて、最近の形態観察が困難であるために、今後は分解者としての腐生作用を主とする糸状菌の教材化に注目して行く予定である。
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