本研究は2年計画で実施しており、その1年目に当たる本年度は予備調査的な観点から研究を進め、次のような結果を得た。 1.理科学習における観察の実態について 観察・実験における学習者の活動を分析するとともに、質問紙法などの調査によって活動と学習過程の関係を調べた。分析対象として、小学校「ものの燃え方」「もののとけ方」などの観察・実験を含む授業を用いた結果、(1)抽出児は実験の約半分の時間において教材を直接観察していた、(2)観察した結果は抽出児の仮説を支持するものであったが、抽出児は同じ実験を繰り返した(以上「ものの燃え方」)、(3)自由試行のような学習者主導型の実験では、観察した事実に基づく多様な気づきや疑問が導かれた(「もののとけ方」)ことなどがわかった。また、次年度の課題として、学習者が観察した事象と、その事象の観察を通して学習者が得た情報とを比較・検討する必要があることが示された。 2.理科教育における観察の位置づけについて 現行の理科教育カリキュラムの生物領域における観察教材を抽出し、その傾向を調べた結果、(1)小学校:栽培・飼育を伴う継続観察や、特徴や規則性、質的・量的変化、因果関係などを見出す比較観察が中心になっている、(2)中学校:分類学的な視点を見出すような比較観察や顕微鏡を用いた観察が多い、(3)高等学校:仮説を検証するための観察や定量的な観察など視点が焦点化されている、ことが明らかになり、学校段階や教材の違いによって観察の質が異なることがわかった。 次年度は本年度の結果を基礎にして、観察を支援する教材を開発し、その教材を利用して観察における学習者と教材の相互作用を分析することを計画している。
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