本研究は、(1)文章生成の内的過程(特に問題発生と問題解決)を実証的に捉えること、(2)協同して文章を書くという行為の効果を作文指導の観点から検討することを目的とした。そのために、(1)被験者が二人一組となり「学習意欲を高めるための国語科学習指導のあり方」(一部、社会科学習指導のあり方)という課題でワープロソフトを用い相談しながら作文を書く、(2)モニター画面(ビデオで記録)、及び書いているときの発話(カセットテープで記録)を時間軸にそってすべて記録するという調査を行った。調査の対象は、大学生(4年生)、大学院生(M1)計10組である。モニター画面の記録・発話の記録・内観報告を分析した結果、文章を書く過程において、「書く内容」「書き出し」「まとめ」「構想」「論理」「文法規則」「分かりやすさ」「想の言語化」などに関する問題が多く発生していること、問題は単一的に発生する場合と複合的に発生する場合とがあること、複合的に発生している場合にはひとつの問題解決が他の問題解決を促すこと、「書くこと」によって問題解決をはかることが多いこと(例:「とりあえず書いてみよう」)などが明らかとなり、協同して文章を書くという行為の効果として、二人で問題解決をはかるため「アハ-体験」を得る機会が一人で書く場合より多くなること、相手に自分の考えを説明するためメタ認知が促進されること、書く「プロセス」を共有するためそれに関する認識(文章観)が深まることなどが確認された。
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