研究概要 |
本課題研究においては,コンピュータ上のハイパーテクストと,学習者の頭の中の心的辞書(メンタルレキシコン)との類似性を指摘シ,ハイパーテクストの原理を応用したホームページ上に学習者個人のメンタルレキシコンを再現する活動を通して,語彙力の向上に役立つ学習法を提案した。 2カ年計画の1年目に当たる本年度は,学習者がホームページを作成する過程で語彙の拡大を狙い,ある特定の語彙項目から個々人の連想ネットワークに沿った語彙項目へと次々にリンクを張る授業実践を行った。この過程で,作成者のメンタルレキシコンの諸相を大まかに把握することができた。同時に学習者の反応から,語彙学習システムとしてのホームページ利用の可能性を確認することができた。 さらにホームページを利用した語彙学習では,単に多くの語句を学べるということにとどまらず,ある語を取り巻く周辺的な情報を含めた「語感」の養成に効果的であることが示唆された。2年目の次年度はこの「語感」の面から,ホームページを用いた語彙学習システムの教育効果を検証したいと考えている。そのため,より多くの視聴覚情報をホームページに盛り込むことができるよう準備を進めている。また,本年度の考察に引き続き,学習者の実態に応じた語彙選択の問題を発展的に論じる計画である。 なお本年度の研究成果は,研究論文,学会における口頭発表等で公表することができたが,それに加え,学習者自身の作成したホームページを公開した意義は大きいと思われる。これにより,他の学習者の「語感」の元に触れることができるなど,別の観点からの学習効果が示唆されたからである。
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