本研究では、日本人学習者を対象とした英語の発音指導における歌唱訓練の有効性を調査することによって、歌唱訓練とリズムやメロディーなどの音楽的要素を導入した英語音声表現教育の可能性を検証することを目的とした実験を行った。26名の被験者(女子大学生)を2つのグループに分け、統制群では、英語の発音の理論的説明に加えて、ある英語の歌詞を音読を中心として朗読の練習を行い、実験群では、統制群と同一の指導者によって同一の英語の歌詞をメロディーにのせて歌う訓練を集中的に一定期間実施し、指導期間の直前と直後に各被験者の英語朗読を録音した。その音声を複数のネイティブ・スピーカーに評価させ、英語発音の上達度をグループ間において比較考察した。ちなみに、この比較の前に、指導前に採取した被験者の音声の評価に基づいて2つのグループの等質性検定をおこなった結果、2つのグループは等質であることが判明した。評価の対象となる発音要素の項目は、母音・子音の発音、リズムのナチュラルさ、音のつながり、スピード、全体的印象に関する7項目である。 2月下旬から音声の評価を行い、現在その評価を詳しく分析中である。分析では、被験者各々の発音を指導の前後で比較し、グループ間で各項目における指導前後の発音の伸び率を調べている。母音・子音などの英語の単音の発音においては、両グループにおいて上達度に有意な差は認められず、したがって、単音の発音の上達には、歌唱訓練は有効な指導手段であるとは言えないようである。しかし、英語の自然なリズム、音のつながり具合、スピード、英語発話の全体的印象などのいわゆる超音節要素の訓練に関しては、歌唱訓練は従来の音読指導よりも効果があることが判明した。この研究結果と考察は平成11年3月にアメリカ合衆国ニューヨークで開催されるTESOL Conventionにおいて発表した。
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