本研究では、生徒の直観と論理的な思考を育成するような教材の開発を目的とする。そのための一つの手段として、現在の高等学校数学にグラフ電卓を教具として導入し、グラフ電卓による視覚的なイメージや具体的な操作活動を通して生徒の直観や論理的な思考を育成する教材を、開発することを試みた。 以下、平成9年度に行った研究概要を示す。 1.教材研究 国内、および海外(アメリカ)でのグラフ電卓の活用例を調査した。その結果、次のような考えに至った。グラフ電卓を単に計算やグラフを表示する道具としてのみ活用するよりも、授業にグラフ電卓を用いた簡単な実験を取り入れ、その実験結果をもとに探究・解析を行うほうが生徒には公式や定理の意味が直観的に理解できる。また、生徒らの直観的に得られた仮説を検証したり証明したりすることにより、論理的な思考力も育成される。 2.授業の設計 問題解決の過程の各段階において、直観や論理的な思考が相互に関わりあい、生徒の理解につながるよう、グラフ電卓を用いた実験・探究活動を取り入れた授業の設計を試みた。授業内容としては、微分、特に導関数の導入部分を取り上げることにした。 授業の設計に際して、次の点に注意した。 ◯ 生徒に具体的な操作活動を経験させる。 ◯ 帰納的・類比的思考を重視する。 ◯ 図やグラフなどの視覚的な表現を重視する。 ◯ 証明・検証といった仮説の裏付け操作を重視する。 ◯ 生徒どうしでの話し合いや討論を授業に取り入れることで、内面的な思考過程を表現させる訓練を行う。
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