ここ数年のコンピュータのハードウェア・ソフトウェアの進歩は、数学教育の方法に大きく影響を与えてきている。従来はBasicで作成されていた数学教材がJavaを用いて作成されるようになリ、またインターネットの普及に伴い、数学に関するホームページの数も急速に増加している。ソフトウェアの価格の急激な下落に伴い、以前は高価であったソフトウェアも学校単位で購入できるようになった。 そのため、MathematicaやMapleといった数式処理システムが1クラスの学生の人数分用意され、実際に数学の授業で使用される事例が増えてきた。 本研究はコンピュータ上の数式処理システムを用いた新しい数学教育において、教育課程や教材の創造をはかるものである。従来の座学形式の授業では、ともすると教員から学生への一方的な知識の伝達や許算技能の修得に終始する授業となる事が多い。数式処理システムを用いることにより、単に用意された教材を機械的に処理するだけでなく、学生の自発的な試行をうながし、創造的な試行を促進するような授業を提供する事ができる。 本研究の初年度においては、インターネットの普及に伴って注目されつつある暗号理論についての教材を作成した。暗号理論としてはRSA暗号が広く知られているが、実用としては楕円暗号の方が注目されている。本研究では両方の暗号についての入門用教材を作成した。これらの暗号は、いずれも本質的に素数を用いるため、素数についての解説に力を入れるとともに、数式処理システムを用いて100万以下の素数を全て求めて、これらをデータベース化した。 そして多くの教員・学生が、それらの成果をネットワークを通じて検索したり、開発された教育用プログラム等の利用をしたりできるように、研究成果をホームページ化してインターネット上に設置した。
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