ここ数年のコンピュータのハードウェア・ソフトウェアの進歩は、数学教育の方法に大きく影響を与えてきている。ソフトウェアの価格の急激な下落に伴い、以前は高価であったソフトウェアも学校単位で購入できるようになった。そのため、MathematicaやMapleといった数式処理システムが、1クラスの学生の人数分用意され、実際に数学の授業で使用される事例が増えてきた。本研究はコンピュータ上の数式処理システムを用いた新しい数学教育において、教育課程や教材の創造をはかるものである。 本研究では、まず中高生向け教材として、素数に関する教材を作成した。数式処理システムを用いて3000万以下の素数(約100万個)を全て求め、これらをデータベース化した。このデータベースはホームページとしてインターネット上に設置し、WWWブラウザから簡単に操作することができるようにした。このホームページのURLは http://www.ge.kochi-ct.ac.jp/cgi-bin-takagi/showprimesjである。次に、高校生、大学生向け教材として公開鍵暗号の入門教材を作成した。剰余の話から、RSA暗号や楕円曲線暗号までを広範囲に扱うものである。このホームページのURLは http://www.kochi-ct.ac.jp/center/jkoho98/kikol/ango.html http://ge.ge.kochi-ct.ac.jp/%7Etakagi/crypto/ である。従来の座学形式の授業では、ともすると教員から学生への一方的な知識の伝達や計算技能の修得に終始する授業となる事が多い。上記の教材では、単に用意された課題を機械的に処理するだけでなく学生の自発的な試行をうながし、創造的な思考を促進するような内容とし、CGlを用いた数学的実験を通して学習することができるよう配慮した。
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