本年度は第一言語による文章産出プロセス及び第二言語学習者の文章産出プロセスに関する先行研究、および文章構造に関する先行研究を収集、分析し、大学院留学生に体系的な論文指導をおこなうために必要な文章構造スキーマの抽出を行うための調査方法を確定し、調査マニュアルを作成した。 調査方法の妥当性と信頼性を高め、分析方法を確立するため、日本語を第二言語として学習している書き手が、文章を書きはじめる前に信念・知識としてどのような文章構造のプランを有しているか、そして、そのプランが文章産出過程と書き上げた文章にどのような影響を与えるかの資料を収集し、分析を行った。資料は、中国語を母語とする留学生4名から、事前アンケート、事前インタビュー、発話思考法を用いた説明文の産出、事後インタビューによって収集した。資料は、文章のどの部分に統括機能を置くか、文章をどのように構成するかという視点から分析された。分析の結果、1)既有プランを持っている場合には、そのプランが文章の方向性を示し、その方向性にそって文章産出が進められる、2)既有プランは書き上げた文章の構成に反映する、3)既有プランを複数持っている場合には、効果的であるという信念を持っている既有プランを用いて文章を書き上げる、という結果が得られた。以上の結果から、今後、日本語学習者に対して、文章の目的に合った適切な文章構成型を知識として与えるだけではなく、それらが効果的なものであるという信念を形成する指導が必要であるという提言が可能となる。
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