本研究に必要なパソコンビデオ等の設備を調え、ビデオ映像と日本語字幕を同期させて任意の部分を話速変換して聞き返すことのできるシステム作りに着手した。試行により、字幕作成環境を調えて任意のビデオソフトに容易に文字情報を同期させることができれば、日本語教師のための教材作成のツールとして様々な可能性を持つことが確認できた。しかし、現存のシステムでは複雑な操作と試行錯誤を要し、設備環境としては十分ではないことがわかった。そこで、実試用に耐え、汎用性のある設備環境を示すことを本研究の第一目的とし、その一例としての教材を作成する、と目的を修正し、装置技術者と協力して、ビデオ信号のデジタル化などにより、より使いやすい環境作りを行なった。また映像の著作権について、映像に書き込むことは不可であることを確認し、映像の外部に字幕を出すこととした。 話速変換の有効性については、難聴者や英語学習者を対象とした試用実験などの先行研究の成果と、申請者が平成7年度と8年度に日本語教育の現場で試用してみた結果を合わせて再検討し、これを有効に使う条件として、(1)目標言語に関する既知の知識と実際の音声現象を照合させ再認するために、言語処理時間がより多く必要とされる場合に用いる、(2)繰り返し再生してもコミュニケーションの流れを阻害したり、情報を聞き逃したりする心配の無い場面で用いる、という結論を得た。 以上の点からも映画のビデオソフトやテレビ番組の録画ビデオなどを本システムを利用した教材に用いることが支持されたので、教材例としては映画のビデオを使ったものを作成することとし、適切なソフトを選定し、実際の授業に用いてビデオ教材の有効な使い方について考察した。
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