上記研究課題について、平成9年度は以下の点を中心に研究を行った。 1 発話データの収集 2 中途上がりイントネーションの特徴に関する分析(音声的特徴・統語的特徴) 3 談話における機能の分析 その結果、特に3の談話における機能について、以下の点が明らかになった。 まず「中途上がりイントネーション」の基本的な機能は、「聞き手の反応を伺いながら、聞き手との協調関係のもとに談話を進めようとする、話し手の姿勢を示す」ことにあると考えられた。さらにその機能を下位分類したところ、1発話継続の確認 2不確かな情報の確認 3聞き手の知識・理解の確認 4同意・共感要求 5注目要求に分類された。 またこのイントネーションには、こまめに聞き手の反応を伺い、それを考慮しながら話しを進める姿勢を示すという「丁寧さ・柔らかさ」という一面もあるが、同時に、「聞いていますか?」「わかりますか?」「そう思いませんか?」などの意味を、言語形式を使わずに上昇イントネーションによって表現し、またそれに応じた反応を聞き手に要求する「反応要求」という、相反する二つの面があると考えられる結果になった。 平成10年度はこの結果を踏まえ、さらに談話的特徴(このイントネーションに対する聞き手の言語・非言語行動を中心に)を明らかにし、また「中途上がりイントネーション」に対する聞き手の認知を調べ、上で述べたこのイントネーションの二面性との関わりを分析していく。
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