本年度はミキシング条件を満足する確率過程の汎関数の分布の漸近展開の研究において進展があった。離散時間の確率過程にたいする結果はGotze-Hippによって示されていたが、その際本質的な条件は指数オーダーのミキシング条件と条件付きクラ-メル条件であった。条件付きクラ-メル条件に相当する条件として、マリアヴァン共分散の非退化性条件を使い、連続パラメータをもつ確率過程に対して漸近展開を証明した。さらに、拡散過程、より一般にセミマルチンゲ-ルの汎関数に適用可能であることを示した。拡散過程にたいして、幾何的ミキシング条件が保証される検証容易な十分条件も得た。さらに、統計的応用として、拡散過程の最尤推定量と確率展開を持つ統計量にたいして、その分布の漸近展開を3次のオーダーまで導いた。この結果により以前の結果をさらに精密にすることができた。また、この漸近展開を情報幾何的に研究した。 本年度の研究において、名古屋大学等での議論が非常に役に立った。当課題においてスカラハド積分にたいする中心極限定理が成り立つこともわかったが、来年度はさらに、この問題を追求する予定である。また、条件付き分布の漸近展開は非常に重要であるが未知の問題で、この解決を試みるつもりである。
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