研究概要 |
推測統計理論において、最尤推定およびそれに基づく尤度比検定は極めて基本的な役割をはたしている。尤度比検定においてはその検定統計量の帰無仮説の下での分布(帰無分布)の裾確率(p値)の計算が応用上重要である。多くの「正則な」統計的検定問題において尤度比検定統計量の帰無分布は少なくとも漸近的にはカイ2乗分布である。しかし変化点問題などある種の統計的モデルにおける検定問題においては、尤度比検定統計量の帰無分布として確率場の最大値の分布が現れ、そこでは個別の議論が必要となる。 ところで確率場の最大値の分布は、その確率場のKL展開が有限でその展開係数により定義される多様体が滑らかで縁を持たない場合には、幾何学的な考察により裾確率の漸近展開が与えられる(Sun(1993),Ann.Probab.)。 本年度の研究においてはまず主要な成果として、多様体が尖った縁を持ついわゆる縁あり多様体の場合にも、裾確率の漸近展開に関してSun(1993)と同様の結果が成り立つことを示した。 また併せて、多変量正規性の検定、多元配置における交互作用の同時信頼領域の構成などの具体的な問題について、統計量の帰無分布の裾確率の漸近展開公式を与えた。次年度は本年度に引き続きさらに多くの具体的な問題に対し、本年度に得られた結果の適用を試みる予定である。
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